MediaTek Dimensity 9400+を搭載して発売されたSamsung Galaxy Tab S11のベンチマークを測定したので、ここにまとめます。
MediaTek Dimensity 9400+の概要
MediaTek Dimensity 9400+は2025年4月にリリースされたチップセットで、2024年に登場したMediaTek Dimensity 9400の上位版に位置づけられます。
MediaTek Dimensity 9400はハイエンドクラスに位置しており、2024~2025年に発売されたフラグシップ級のモデルに採用されるチップセットで、MediaTek Dimensity 9400+もGalaxy Tab S11シリーズなど最高クラスのモデルに採用されています。
MediaTek Dimensity 9400との主な違いはCPUの最大クロック周波数が0.1GHz向上していること、NPU性能が20%向上していることが挙げられますが、他はほぼ同じのマイナーチェンジです。
MediaTek Dimensity 9400+ | |
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製造 | TSMC N3P |
アーキテクチャ | armv9 |
リリース | 2025/04 |
構成 | |
CPU | 1x Cortex-X925@3.73GHz 3x Cortex-X4@ 4x Cortex-A720 |
GPU | Immortalis-G925 MC12 |
NPU | MediaTek NPU 890 |
接続性 | |
ディスプレイ | WQHD+@180Hz |
メモリ | LPDDR5X-10667Mbps |
ストレージ | UFS4 + MCQ |
通信 | |
モデム | 5G modem:7Gbps |
ネットワーク | Wi-Fi 7@7.3Gbps Bluetooth 6.0@12Mbps |
カメラ | |
ISP | Imagiq 1090 |
写真 | 320MP |
動画 | 8K@60FPS |
MediaTek Dimensity 9400+を搭載する機種
日本国内でMediaTek Dimensity 9400+を利用できる機種は次の通りです。
2025年9月に日本国内で上記の機種が一気に登場することになりました。
ほとんどがフラグシップ級の性能を保持していますが、MediaTek Dimensity 9500のリリース時期と被っており、登場してすぐ型落ち性能となってしまいました。
ベンチマーク測定
測定を行うモデルはGalaxy Tab S11 256GB(日本国内版)です。
AnTuTuベンチマーク
定番のAnTuTuベンチマークで測定、計測に使ったのはVer10.5.1です。
総合ベンチマークスコアは2406438点です。
- CPU:531613
- GPU:1112805
- MEM:405046
- UX :356974
比較 | AnTuTu 10 総合スコア |
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Google Tensor G4 | |
Google Tensor G5 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8s Gen 4 | |
Dimensity 9400+ | |
Snapdragon 8 Elite |
Snapdragon 8 Eliteには及びませんでした。
機種による違いもありますが、Galaxy Tab S11ではMEMのスコアが伸び悩んだ一方でCPUは50万点、GPUは110万点を超えており、CPUとGPUは十分な水域にあると言えます。
スコアが高めに出る最新バージョンのAnTuTu V11.0.2-OB2で測定しています。
スコアが15%ぐらい上昇するようですが、GPUやMEMは低下しており、影響力が下がっているようです。
AITuTu
AnTuTuベンチマークのAI性能を測定するAITuTu v3.5を測定しました。
MediaTek NPUを搭載しますが、結果は253369点と低いです。Snapdraon以外のSoCはスコアが低く出ます。
参考値程度です。
比較 | AITUTU |
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Snapdragon 8 Gen 1 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8s Gen 4 | |
Snapdragon 8 Elite |
3DMark
3Dグラフィックの性能を測定するベンチマークで、Android OSではVulkan APIで測定されます。このスコアが高ければ高いほどGPU性能が良いとされ、実際のゲーム上でも有利になります。
測定は定番のWild Life Unlimitedおよび高負荷なWild Life Extreme Unlimitedです。
比較 | Wild Life Unlimited |
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Snapdragon 8 Gen 1 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8s Gen 4 | |
Snapdragon 8 Elite | |
Dimensity 9400+ |
比較 | WL Extreme Unlimited |
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Snapdragon 8 Gen 1 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8 Elite | |
Dimensity 9400+ |
いずれもSnapdragon 8 Eliteよりも良いスコアが出ており、AnTuTuと合わせてGPU性能ではスナドラを凌駕していそうです。
(ベンチマークの提供:https://benchmarks.ul.com/)
Geekbench 6
CPUおよびGPUの性能が測定できる定番ベンチマークのGeekbench 6です。
比較 | Geekbench 6 CPU |
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Snapdragon 8 Gen 1 | |
Google Tensor G4 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8s Gen 4 | |
Google Tensor G5 | |
Dimensity 9400+ | |
Snapdragon 8 Elite | |
比較 | Geekbench GPU Vulkan |
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Google Tensor G5 | |
Snapdragon 8 Gen 1 | |
Google Tensor G4 | |
Snapdragon 8 Gen 2 | |
Snapdragon 8 Gen 3 | |
Snapdragon 8s Gen 4 | |
Dimensity 9400+ | |
Snapdragon 8 Elite |
GPUスコアではSnapdragon 8 Eliteには及びませんでしたが、CPUマルチスレッド性能では高めの良いスコアを残しました。
ブラウザベンチマーク
ブラウザ上で実行できるベンチマークを測定しました。いずれも無料で測定できるので簡単に比較ができます。
AnTuTu HTML5 Testはベンチマークの大手AnTuTuが公開しているブラウザベンチマークです。
- AnTuTu HTML5 Test:83767
Google Octane 2.0はCPUのjavascriptの実行速度性能を測定するベンチマークで、元はGoogleが制作したベンチマークでしたが、その後は開発が止まり、今は有志がマルチスレッド測定を可能にしたGoogle Ocntane Plusを公開しています。
- Google Octane 2.0:94224
- Google Octane Plus マルチ:487174
シングルスコアの参考
Speedometer3.1はAppleやGoogle、Microsoft、Mozillaの大手ブラウザベンダーが制作したベンチマークで、Webアプリの応答速度を測定します。
- Speedometer3.1:24.5±0.76
WebXPRT4はWebで行う作業の総合的な性能を測定します。
- WebXPRT4:236
総評
非常に高いスコアを出しており、優秀なチップセットだと言えます。Snapdragon 8 Eliteに比べても遜色ないベンチマーク結果が出ています。
しかし実際にこのチップを搭載したモデルが日本国内で発売された2025年9月には、次世代のチップセットが発表されており、性能を期待して製品を購入する場合はやや期待はずれとなっています。
Snapdragon 8 Eliteと共にブレイクスルーな性能を成し遂げた世代ではありますが、さらに次世代のMediaTek Dimenisty 9500でもCPUシングル性能が30%以上も向上したなど、またしても飛躍的な性能アップがアピールされていて、このチップセットの性能は早くも過去になろうとしています。
リリースされる時期がもう少し早ければ、性能にかなり満足ができたはずなので、非常に惜しいチップセットだと思います。
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