10月9日、米Intel社からPanther Lakeのコードネームで知られるCore Ultra シリーズ3 プロセッサーのリリースが予告されました。
これらはCPUリソグラフィがIntel 18A をベースに製造される最初のチップセットで、Intel 18Aは米国で生産される初の2nmノード半導体です。(GPUにはTSMC N3Eが採用されるとのこと)
公開された驚異的な性能
今回のプレスリリースでは、以前に噂されたCore Ultra X7 368Hなどの具体的なSoCが発表されたわけではありません。

Panther Lake(Core Ultra シリーズ3)は現在生産中にあるとしており、その大まかな性能と概要が公表されています。
IntelがPanther Lakeのリリースに先駆けて公表した内容は次の通りです。
- Lunar Lakeと同等の消費電力で、Arrow Lakeと同等のパフォーマンス
- CPUは最大16コアで、前世代より50%高速化
- GPUは最大12コアのXeコアを搭載し、前世代より50%以上高速化
- XPUは最大180TOPS
今までのプロセッサーではAI PC需要に応えてNPUの性能が注目されていましたが、今回はNPUについては触れられておらず、CPUとGPUとNPUを合算したピーク演算となるXPU性能のTOPSを発表するに留まりました。
3モデルに別れる
また以前噂されていたように、Panther Lakeはハイエンドからエントリーまでの3つのクラスに別れます。
| Panther Lake | CPU構成 | GPU Xeコア | 最大メモリ帯域 |
|---|---|---|---|
| ハイエンド | 最大16コア 4P+8E+4LPE |
12コア | LPDDR5x 9600MT/s |
| ミドルレンジ | 最大16コア 4P+8E+4LPE |
4コア | LPDDDR5x 8533MT/s |
| エントリー | 最大8コア 4P+4LPE |
4コア | LPDDR5x 6800MT/s |
ミドルレンジ、エントリーではXeコアが4コアになっており、性能が大きく落ちるであろうことが推測され、エントリーは末尾にUがつくとの前情報がありますが、その噂通りでパフォーマンスを求める顧客には向かないチップになりそうです。
Arrow Lake、Lunar Lakeとの比較
Core Ultra シリーズ2として登場したArrow Lake、Lunar Lakeとの大まかな比較です。
| 世代 | CPU | GPU Xeコア | NPU性能 | XPU |
|---|---|---|---|---|
| Panther Lake | 最大16コア 4P+8E+4LPE |
最大12コア | 非公表 | 最大180TOPS |
| Arrow Lake | 最大16コア 6P+8E+2LPE |
最大8コア | 最大13TOPS | 最大99TOPS |
| Lunar Lake | 8コア 4P+4LPE |
最大8コア | 最大48TOPS | 最大120TOPS |
Panther LakeのCPUの構成は、Arrow Lake Hと比較すると低消費電力コア(LPE)が4基に増えており、Lunar Lake並みの省電力とするインテルの公表に一定の説得力を持たせています。
Arrow Lake HではGPUは最大77TOPS、Lunar LakeのGPUは最大66TOPSでしたが、Panther LakeではGPUの具体的な性能がまだ公表されていませんが、XPUの大きな増加はコア数が増えたGPUの恩恵が大きいと推測されます。
GPU性能の概算
GPUの性能向上はArrow Lake HおよびLunar Lakeと、3DMark Solor BayのスコアやCyberpank 2077の動作で比較しているとしており、3DMark Solor Bayのスコアは前モデルでおおよそ15000点程度だったことから、2万点は超えると予想します。
先日発表されたQualcomm Snapdragon X2 Eliteシリーズに内蔵されるQualcomm Adreno X2 90もだいたい22000点前後となっていました。
わかりやすく言えばNVIDIA RTX 3050 Laptop を余裕を持って超えると予想され、2022~2023年頃にかけて発売された安価なゲーミングノートPC程度のGPUを期待しても良いのではないかと思われます。
*3DMark Solor BayはUL Solutionsが提供するレイトレーシングに対応した新しいグラフィック ベンチマークでVulkan1.1 APIが用いられます。
リークされたTimeSpy
海外のレビュワーが実際に12Xeコアを持つPanther Lakeのチップセット(Core Ultra X9 388H)で、3DMark Time SpyのGraphicsスコアを実測したというリークがあります。
それによればLPDDR5X-8533MT/sの場合は6233、LPDDR5X-9600MT/sなら6300としており、そのサイトではRTX 3050 Laptop 6GBを10%以上上回る結果となっていますが、RTX 4050とは大きな差があると指摘されています。
性能は一昔前のエントリー級のゲーミングノート クラスですが、Panther Lake最高峰となるCore Ultra Xシリーズを搭載したノートがどれぐらいの価格帯で提供されるかにもよりますが、薄型モバイルノートで数多くのゲームタイトルの快適なプレイが可能になると思われます。
*3DMark Time SpyはUL Solutionsが提供するWindows向けのグラフィックベンチマークで、より最新の環境に適した最も新しいAPIとなるDirectX12を用いています。
Panther Lakeに大きな期待
新しいIntel 18Aノードに注目が集まり、このPanther LakeはまさにIntelの社運をかけた製品となります。
AI PCという概念が登場してから、プロセッサーはGPUよりもNPUにリソースが注力される傾向にありましたが、今回はNPUについて個別に言及されずGPUに重きを置いているようです。
長らくグラフィック性能が停滞気味だった状況を少し打破したCore Ultra シリーズ2に引き続き、GPU Xeコア数が一気に12となった新しいグラフィックに期待が膨らみます。
一方で懸念されるのが販売価格です。
Arrow Lake Hは比較的安価で10万円を切る価格で提供されるモデルもありましたが、Panther Lakeの12コアGPUを内蔵したフルスペックSoCの価格帯が、昨年のLunar Lakeと同じ25万円程度になるならば、また流通しづらい製品になりそうです。
メインストリームとなるモデルは4コアGPUなため、上位モデルとの差が大きく開くことになりそうです。



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