MediaTek Dimensity 9500や、Samsung Exynos 2600など、次期Androidスマホ向けSoCの大幅性能向上を裏付ける、期待が膨らむ情報が登場しました。
Arm C1 CPU、Mali-G1 GPUの登場
ARM社は9月10日、CPUセットにおいて長い歴史を持つお馴染みのCortexという名称を廃止して、ARM C1シリーズCPUを発表しました。また次世代のGPUとしてMali G1 GPUも同時に発表しています。
これらは2024年に発表されたArmv9.2AのCPUとなるCortex-X925/A725/A520と、Immortalis-G925 GPUの組み合わせに代わるArm クライアント コンピューティングサブシステム(CSS)で、AI時代に向けて再構築された新CSSはArm Lumexと命名されました。
Arm C1 CPU、性能の大幅向上
今回新たに発表されたArm C1 CPU群はArmv9.3-Aアーキテクチャを採用します。
簡単に表にまとめました。
構成 | 旧CPU | 新CPU | 向上 |
---|---|---|---|
プライムコア | Cortex-X925(X5) | C1-Ultra | シングルスコア25%↑ |
プライムコア | なし | C1-Premium | |
ビッグコア | Cortex-A725 | C1-Pro | 性能11%↑ |
リトルコア | Cortex-A520 | C1-Nano | 電力効率26%↑ |
Arm C1 CPUは前世代よりも平均で30%パフォーマンス向上、ゲームや動画ストリーミングでは15%高速化したとしており、一方でブラウジングや動画視聴においては12%の消費電力を削減したとしています。
特筆すべきはプライムコアとなるArm C1-Ultraの性能向上で、シングルスコアが最大25%向上しているとしています。
また今回は新たなポジションとして、準フラグシップモデル向けのプライムコアとしてArm C1-Premiumが登場しました。
C1-Ultraよりもダイサイズが35%小型化されているとしており、L1およびL2キャッシュサイズが縮小されましたが、Armは同等クラスのパフォーマンスを維持しているとしています。
C1-UltraとC1-Premiumのキャッシュメモリ比較 | ||
---|---|---|
キャッシュメモリ | C1-Ultra | C1-Premium |
L1キャッシュ 命令+データ |
64KB+128KB | 64KB+64KB |
L2キャッシュ | 2MB/3MB | 1MB/2MB |
L3キャッシュ | 0KB-32MB | 0KB-32MB |
現時点で採用される候補は示されていませんが、プレミアムSoCとなるQualcomm Snapdragon 7+や8sシリーズ、MediaTek Dimensity 8000シリーズなどが、Arm社の言う準フラグシップSoCに該当していると考えられます。
Arm Mali G1 GPU登場
GPUも刷新され、新たなフラグシップSoC向けGPUとしてMali G1-Ultra GPUが発表されました。またその下に位置するプレミアムSoC向けのGPUとしてはMali G1-Premium、メインストリーム向けのGPUとしてMali G1-Proが発表されています。
Mali G1シリーズ | シェーダコア数 | 旧シリーズ |
---|---|---|
Mali G1-Ultra | 10コア~最大24コア | Immortalis-G925 |
Mali G1-Premium | 最大9コア | Mali-G725 |
Mali G1-Pro | 最大5コア | Mali-G625 |
Mali G1-Ultraは第5世代 Arm GPUアーキテクチャをベースにしており、前世代GPUに当たるImmortalis-G925 GPUと比較すると、改良されたArm RTUv2(レイトレーシングユニットv2)により2倍のレイトレーシングパフォーマンスを実現しており、ハードウェア レイトレーシング対応ゲームではフレームレートが40%向上しているとします。
オンデバイスのAI処理能力も大幅に向上しており、特に会話認識においては104%の性能向上を実現しました。
また主要なベンチマークでは最大20%のスコアが向上したとします。
Dimenisity 9500などに搭載か
MediaTekの次世代フラグシップSoCとなるDimensity 9500に関する噂として、以前から新登場するCortex-X930(Travis)やCortex-A730(Alto)を搭載するとされていましたが、今回正式に発表されたC1シリーズを指していると考えられます。

特にC1-UltraのCPUシングルスコアが最大で25%向上の情報からも、近年のインフレ気味なCPU性能の向上はまだまだ止むことがなさそうです。
また業界初となる2nmプロセスを掲げて登場するとされるSamsung Exynos 2600は以前リークされたベンチマークにおいて、Snapdragon 8 Elite Gen 2をも上回るスコアを樹立しており印象的でした。

Google Tensorについては、G5でもCortex-X925を採用せずCortex-X4止まりでしたが、C1-Ultraを採用することで飛躍的なパフォーマンスの向上となる可能性があります。
プレミアム向けにはより期待?
Xiaomi POCO X7 Proなどに搭載されるDimeisity 8400を筆頭としたDimensity 8000シリーズは、プレミアムSoCとしながらもCortex-Xコアは採用せず、最大でもCortex-A725などビッグコア止まりのCPUでした。
そのためAnTuTu総合スコアは高いものの、CPUシングルスコアが低いという欠点が露呈していました。

ですが今回発表されたC1-Premiumが、次期Dimensity 8500にプライムコアとして採用されれば、主にシングルコアにおいて大きな性能の向上が期待できます。
一方でSnapdragon 7+や、8sなどクアルコムが展開するプレミアムSoCでは、Cortex-Xコアが採用されて高いCPU性能だったために、これらにL2キャッシュが縮小されたC1-Premiumが採用されれば、キャッシュメモリの観点ではスペックダウンとなるかもしれません。
終わり
いよいよ次世代のArm製CPUが発表されたため、まもなくMediaTek Dimensity 9500などが発表されるものと見られます。
刷新された新たなArmv9.3-Aチップセットに大きな期待が寄せられます。
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