ここ数年ARM系プロセッサー搭載のパソコンが台頭して、Intel と AMD が採用するX86系CPUはバッテリー持ちの観点で不利な状況が続いた。
それが去年に登場した Intel Core Ultra 200によって覆り始め、長らく高いバッテリーパフォーマンスをアピールしていたAppleのMacbookが後退する結果となっている。
Core Ultra 200の概要
Core Ultra 200にはモバイルノート向け省電力チップの「Lunar Lake」シリーズとハイスペックノート(およびデスクトップ向け)の「Arrow Lake」がある。
省電力なLunar Lakeは最大48TOPSのNPUを搭載しておりCopilot+PCの要件を満たす。
Core Ultra 258V | |
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コア数 | 4+4 |
スレッド数 | 8 |
クロック数 | 2.2-3.7GHz/2.2-4.8GHz |
PBP | 17W |
製造プロセス | TSMC N3B/N6 |
GPU | Intel Arc 140V |
NPU | 47TOPS |
発売 | 2024 Q3 |
ハイクラスなArrow Lakeはノート向けは今年に入って発表されたのでまだまだ未知数だが、Lunar Lakeよりも強力なCPUとGPUを搭載する。NPUはMeteor Lakeと変わらずCopilot+PCの要件は満たさない。
Core Ultra 255H | |
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コア数 | 6+8+2 |
スレッド数 | 16 |
クロック数 | 1.5-4.4GHz/2.0-5.1GHz |
PBP | 28W |
製造プロセス | TSMC N3B/N6 |
GPU | Intel Arc 140T |
NPU | 13TOPS |
発売 | 2025 Q1 |
どちらともインテルCPUの特徴であるハイパースレッディングを廃止した。Lunar Lakeは性能ダウンが顕著だが、その反面高いバッテリー持ちを実現している。
バッテリーパフォーマンスの改善の背景にあるのはそれだけではない。製造プロセスの変更が大きいと思われる。
インテルCPUでありながらインテルの半導体ではなくTSMC N3Bを採用している。結果、今までのインテルPCのバッテリー持ちは何だったのかと言いたくなる状況となった。
ARM系を超えたバッテリー持ち
実際にそのバッテリーテストをして驚くべき結果となった。レビューサイト*1から引用する。
いずれも輝度150cd/m²でブラウジングにより計測されたデータでLCDパネルを搭載する。ディスプレイが小さく、バッテリー容量の大きい機種ほど有利なためMacbook Pro 14は上位に入っている。
15インチのMacbook AirとSurface Laptop (Snapdragon)はいずれもCore Ultra 200に劣る結果となった。驚異的な数値を示しているのは「Surface Laptop 15 Lunar Lake」と「LG Gram Pro 16」だ。大画面でありながら長時間の駆動ができている。
画面の明るさをもっと上げれば結果は差は大きく開くようだ。最大輝度では次のような計測結果となっていた。
バッテリー容量がより小さく、最大輝度が100nit明るく、120Hzディスプレイを搭載し、やや面積が大きいはずの「Surface Laptop」が、2時間以上もMacbook Airを上回っている。印象的なデータです。*2
パフォーマンスも最速クラス
ハイパースレッディングが廃止され、さらにコア数も減り、省電力な17WベースとなったCore Ultra 200Vシリーズだが、当然ながら大きく性能を落としている。
マルチスコアは場合によっては13世代のPプロセッサーよりも劣っているが17Wベースの省電力設計になったことを踏まえれば仕方ないのかもしれない。
一方でシングルスコア性能は大きく向上し現行CPUにふさわしい高性能である。以下はブラウザベンチマークの比較。引用*3
Octane 2.0 | |
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Ryzen AI 7 350 | 116857 |
Core Ultra 7 268V | 114924 |
Core Ultra 7 258V | 113526 |
Apple M4 10コア | 109046 |
Snapdragon X Elite X1E-80-100 | 98705 |
Apple M3 | 98093 |
Core Ultra 155H | 97162 |
参考 | |
Core Ultra 9 275HX | 130140 |
Ryzen AI MAX+ 395 | 123023 |
Apple M4 Max | 116813 |
モバイルCPUではZen 5 CPUを搭載するRyzen AI がトップだがCore Ultra 200Vはほぼ誤差ぐらいまで迫っている。高速なブラウジングで遅く感じることはないだろう。
Apple M4シリーズは発表時には最速のシングルスコアを有していたが、今はインテルとAMDに押されている。
インテルPCのバッテリー持ち改善がもたらすメリット
ARM系は互換性にまだまだ難があり、また選択肢もまだまだ少ない。インテルチップを搭載した機種は、毎年軽量を売りにしたモデルが多数発売され、機種によっては5G WWANオプションも存在する。軽量でバッテリーも十分持つ、パフォーマンスも高いという三拍子揃ったデバイスがこれから増えていくだろう。この1年でモバイルノートパソコン界は大きく前進する予想される。
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