ずっと書こうと温めていた記事です。
長期に渡る私の検証結果から「Galaxyデバイスは直接給電機能を備えている可能性がある」という結論に至りました。以下の記事をご覧ください。
前提知識
簡単なADBデバッグ環境を理解しておいてください。
読む前にADB shell dumpsys batteryコマンドで出力されるバッテリー状態のことについても理解しておいてください。頻出します。
直接給電とは
パイパス充電(Bypass Charging)や電源駆動と言われたりもします。
この機能があれば、スマホに充電ケーブルを繋げたままにすることでバッテリーを消耗せずデバイスを使用できます。バッテリーを使わず使用できるのでバッテリーの劣化を極力防げます。WindowsノートPCは大抵この機能が付いています。
長期間負荷のかかる作業などを行う際は、このバイパス充電を使用してバッテリーの発熱を抑えて極力デバイスへの負荷を減らすことができます。
スマホは常時バッテリーに繋いでおくことが難しいですが、自宅で使うことが多いタブレットはバッテリー消耗をほぼゼロにできます。実現できれば非常に価値があります。
「ゲーム中はUSB PDを一時停止」を無理やり有効にする
このメソッドを「pass_through 1」と呼んでいます。
Galaxy S21以降のデバイスにはゲーム中に直接給電を行う公式機能があります。「Game Booster」にある「ゲーム中はUSB PD充電を一時停止」がそれです。
PPS25W以上のアダプターに繋いでいるときのみ有効になります。これはいわゆる「超急速充電」の表記で充電している状態のときです。
ゲーム中は充電器に繋ぎっぱなしにしても基本的にはバッテリー残量が増えたり減ったりしないようになります。その際は「充電完了までの時間」は単に「充電中」となります。
Galaxy をADBデバックできる環境を整えれば、ADBコマンドで
adb shell settings put system pass_through 1
とすることでゲーム中以外でも無理やり有効できます。
ゲームアプリ使用時以外でも電源に繋いでる状態でスマホの電池残量は増えません。「充電完了までの時間」は表示されず単に「充電中」となるので、直接給電が有効となっていることが確認できます。
インジゲーター付きのタイプCケーブルで確認すればしっかりと電力が供給されていることがわかります。
アプリ「AccuBattery」で確認すると充電電流はゼロに近い値でプラマイを前後する値を示します。
ちなみに充電を再開したい場合は
adb shell sesstings put system pass_through 0
とADBコマンド入力して解除します。
SetEdit2018を導入していれば切り替えがより簡単です。
なお再現性は曖昧ですが、この機能を無理やり使用している際にゲームアプリを実行すると自動で解除され充電が開始されたりします。
この「pass_through 1」は国内外のファンコミュニティサイトで語られている有名な事柄です。
「バッテリーを保護」でも直接給電される?
私が長期間検証した結果、One UI 6.1で刷新された「バッテリーを保護」でも直接給電を行っている可能性が高いです。
この状態で充電ケーブルに繋いで「バッテリーを保護するために充電を停止」と表示されたら直接給電されています。
One UI 7ではバッテリー保護オプションが80%から95%まで選択できるようになったので、実行するのがより簡単です。
この「バッテリーを保護」は勝手に状態が解除されたりする「pass_through 1」より断然安定しています。ADBコマンドで無理やり直接給電にするなどのめんどくさい手順を行う必要はありません。
これで本当に電源駆動されているのか?という疑問はあります。私が半年以上にわたって検証して得た根拠は次の通りです。
根拠1 充電を停止していても電力は供給されている
「バッテリーを保護するために充電を停止」の状態でインジゲーター付き充電ケーブルに繋ぐと「pass_through 1」と同様に、充電が停止されているにも関わらず電力が供給されていることを確認できます。
例えば比較的重たいアプリに分類される標準のカメラアプリを開いた場合、一瞬5W前後の大幅な電力供給が行われしばらくすると2W程度に落ち着きます。
動画にて様子を
Galaxy バッテリーを保護で充電が停止しているはずなのに電力が供給されている謎。
うーん、これは pic.twitter.com/mqlsgZjTtA— もばさい! (@mobasai_com) May 3, 2025
デバイスには充電を停止と表示されますが、実際には電力の供給は停止されていません。重たいアプリを実行中に電力が増加する現象は、電源駆動を備えた一般的なWindowsノートパソコンと似ています。
しかし電池残量が増えたり減ったりしないので、直接給電されていると考えるのが普通です。
また常に充電器に繋いでいれば温度は熱くなりそうですが温度は低く保たれています。dumpsys batteryコマンドなどで確認すると20℃前半で推移します。
根拠2 充電サイクルが回っていない
Galaxyタブレットの購入時から「バッテリーを保護するために充電を停止」の状態で使用して長期的にバッテリー劣化を調べました。
以下のADBコマンドでバッテリー状態の確認ができます。
adb shell dumpsys battery
このコマンドについては次の記事をご覧ください。
私のギャラタブは購入してから半年以上この状態で使用した結果、mSavedBatteryUsage
が未だに400程度、すなわちバッテリーサイクルが4回という結果となっています。(たまに屋外利用しているので)
常に電源を接続して利用してきましたが、バッテリーが消耗しているといった感じもありません。バッテリー持ちは至って良好です。
これは「バッテリーを保護するために充電を停止」の状態で、充電されていないという一つの確証と言えます。
2つの方法は内部的に異なる可能性
「pass_through 1」と「バッテリーを保護するために充電を停止」は内部的に同じ扱いというわけでもありません。
adb shell dumpsys battery
で2つの充電状態のときにデータを取ると次のようなことが確認できました。
Current Battery Service
におけるstate:
の値
- 「pass_through 1」は充電中を意味する
status:2
- 「バッテリーを保護するために充電を停止」はバッテリー保護中を意味する
status:4
「pass_through 1」の状態で「バッテリーの保護を最大」にするとstatu:4
となり充電が停止されます。このことからも「pass_through 1」は内部的には充電と同じ扱いだと確認できます。
adb shell dumpsys batteryh
はAndroid OSの機能で、statu:4
は別メーカーのデバイスでも共通のパラメータです。一方で「pass_through 1」はサムスンの独自機能です。
なのでこの「バッテリーの保護を最大」による直接給電は「pass_through 1」の技術が応用されているというわけでもなさそうです。他のAndroidデバイスでもstatu:4
が確認できれば直接給電されていると言えるかもしれません。
サムスン以外の端末
サムスン以外ではOPPOがColor OS 14で「バッテリー充電80%止め」を追加しました。その他、Pixelも不定期で80%止めが有効になる機能がありましたが、最近は手動でオンにできるようになりました。
これらのデバイスでも、バッテリー充電機能で直接給電を行っているかはわかりませんが、OPPO A79では同様の充電停止後も電力供給される現象を確認しています。
一方でOSの機能にバッテリー充電80%止めがあってもstatus:4
とならず、充電中を意味するstatus:2
の端末もあります。(Poco X7 Pro)
status:4
間は電源を繋ぎっぱなしで利用しても大丈夫だと言うことです。
まだまだ検証が必要
念押ししますが、あくまでもこれは私の持論です。私はサムスンの技術者でもないただの一般人なので確定的な証拠は何も出せません。この方法に対する責任は何も負いません。
私と同様の主張をしている人はごく僅かですが存在します。もっともっと検証データが必要です。
以前に海外の掲示板にて、管理人がこのトピックを投稿したところ肯定的な意見が帰ってきました。
それから半年程度、バッテリーサイクルやバッテリー最大容量の監視、検証を繰り返して結論に至りました。
Galaxy以外でも「バッテリー保護」のオプションがあるスマホは直接給電ができる可能性が高いです。特にAndroid 15にて多くのスマホに導入されました。
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